第1部 基調講演「地球の健康(ワンヘルス)と生物多様性」


 SDGs(持続可能な開発目標)、そして、感染症対策のキーワードとして浮上した、ヒト・生物・そして自然環境の健全性を一つのものとして維持しようという、地球の健康=「ワンヘルス」という考え方や取り組みが注目されています。それらは、生物多様性とも深くかかわります。気候変動、パンデミックなど複合危機の時代状況を読み解き、多角的な視点からみた、持続可能な社会構築のための問題解決の糸口を提起します。本サミット全てのプログラムに通ずる、将来に向けたひとつの方向性を示します。

古沢 広祐(ふるさわこうゆう) 氏

(國學院大學研究開発推進機構客員教授、(NPO)「環境・持続社会」研究センター代表理事)

 

 大阪大学理学部(生物学科)卒業、京都大学大学院農学研究科(農林経済)農学博士。國學院大學・経済学部教授を定年退職後、同・研究開発推進機構客員教授。著書に『食・農・環境とSDGs~持続可能な社会のトータルビジョン』農文協、『みんな幸せってどんな世界』ほんの木、『食べるってどんなこと?』平凡社など。


第2部 菜の花サミット20年の歩みと展望


 2001年にスタートした第1回全国菜の花サミットから、20回目を迎える現在、「新世代」若い世代が育ってきました。

 一方で、菜種油の国内生産1%は未達成、菜種栽培に対する国・都道府県・市町村の制度設計(戸別所得補償の増額など)も、十分にはできていない現状です。                          

 気候危機が現実のものとなる中、地域エネルギーBDFの再評価が見え始めており、"食とエネルギーの地域自立"をめざす「菜の花プロジェクト」の価値を確かなものにしていきたい。

 未来世代に持続可能な社会へと、バトンを渡すため、今を生きる私たちの更なる実践と、地域からの発信力アップを目指します。

<発表者>

青山裕史(あおやまひろし)氏 
(油藤商事株式会社 代表取締役)

 

 滋賀県豊郷町生。50歳。油藤商事株式会社は明治28年創業。村でも評判の藤八油「油屋・藤八」から続き今年で128年。「売り手よし、買い手よし、世間よし」のユニークな発想で、「ガソリンスタンドをまちのエコロジーステーション」と位置づけイノベーションを起こす。いち早くバイオディーゼルの精製プラントを導入し自社で燃料化に踏み切り一般販売を開始。エネルギーの地産地消を目指し奔走中。

太谷優子(おおたにゆうこ)氏
(NPO法人地域づくり工房 理事)

 

長野県大町市在住。大学卒業後、環境分析業務に従事。結婚後、民宿を営みながら育児(自)。2005年本会のBDF事業立ち上げ時に菜の花プロジェクトに参画。その後、オリーブオイルソムリエに学び、菜種オイルソムリエ講座、和風ヴァージンオイル普及活動を担う。

 環境省環境カウンセラー。県地球温暖化防止活動推進員。


園田由未子(そのだゆみこ)氏 
(NPO法人愛のまちエコ倶楽部)

 

 1981年千葉県生まれ。広島県立大学卒。中山間地域の農村で学び、日本の農業・農村に関わることを仕事にしようと決意。農業系出版社・自然食の宅配会社を経て、滋賀県への移住を機に2007年愛のまちエコ俱楽部に入社。2017年より事務局長。菜の花プロジェクトの実践や農業体験、新規就農支援などの農村活性事業に取り組んでいる。

小林友子(こばやしともこ)氏
(双葉屋旅館 女将)

 

1952年 福島県南相馬市小高区に生まれる。

1976年 小林岳紀と結婚、転勤生活になり、筑波、東京、札幌、柏に住む。

2001年 両親が倒れ、小高に単身で戻リ、実家の旅館業の女将として手伝う。

2019年 兄夫婦と共に家業の旅館業を母の代わりに営む。

2011年 主人が小高に移住、兄夫婦と共に旅館を営む。

    3月11日東日本大震災に遭い、原発事故により避難生活。

2016年 7月12日原発事故避難区域、南相馬市20キロ圏内解除。旅館の改修後、主人と小高に戻るリ現在に至る。


高橋荘平(たかはしそうへい)氏 
(一般社団法人えこえね南相馬研究機構 代表理事)

 

 震災後、南相馬除染研究所で除染や測定を行う。現在は南相馬除染研究所、えこえね南相馬研究機構の代表を務め除染研究所では除染、定点での測定を2011年7月~2021年4月まで行い環境変化の発信、不安の解消を目的とし、えこえね南相馬ではソーラーシェアリングの実践、再エネの普及により将来の希望につなげたいと活動している。


<進行役>

藤井絢子(ふじいあやこ)氏 
(
NPO法人菜の花プロジェクトネットワーク代表)

 

 神奈川県横浜生まれ。1971年より滋賀県に在住。図書館づくり、地域生協にかかわり、環境の専門生協を立ち上げ、環境分野で実践を重ねる。とりわけ、グローバル化・市場化への対案として、食とエネルギーの地域自立をめざす「菜の花プロジェクト」を構想。滋賀県東近江市発祥の「菜の花プロジェクト」は国内外の共感を得、地域の様々なセクターと連携し、“地域が主役”“地域から持続可能な社会を”を展開。

大津愛梨(おおつえり)氏
(NPO法人田舎のヒロインズ 理事長)

 

 ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、ミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で就農し、O2Farmの屋号で無農薬・減農薬の米を栽培している。女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長。2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。


第3部 生物多様性を育む農業国際会議(ICEBA)の10年


 生物の多様性を育む農業国際会議(International Conference for Enhancing Biodiversity in Agriculture = ICEBA = アイセバ)。民間稲作研究所の創始者、故・稲葉光國氏を中心に、地域資源と結び付けた生物多様性農業技術の確立と水田を中心とした生物多様性保全を目指してきました。これまでの開催地である5つの自治体が集い、これまでの取り組みの成果を振り返り、目指すべき自然共生社会の将来像をともに考えます。

<発表者>

太田 洋(おおたひろし) 氏

(千葉県 いすみ市長)

 

 法政大学経済学部卒業後、1972年千葉県庁に入庁。千葉県衛生部医療施設課長を務め、1999年に千葉県庁を退職。その年の10月に岬町長に就任し、2005年12月の市町村合併により、いすみ市長に就任。趣味は、旅行と読書。

渡辺 竜五(わたなべりゅうご) 氏

(新潟県 佐渡市長)

 

1965年生まれ。佐渡市職員として、農業、総合政策、総務、病院、教育に携わる。特に2008年には「朱鷺と暮らす郷認証制度」を確立し、トキの野生復帰と佐渡米のブランド化や販売網を構築。2011年には日本で初となる世界農業遺産認定に貢献。2019年に佐渡市を退職後、民間企業の役員として観光に携わり、20204月に佐渡市長に就任。


寺田 洋一(てらだよういち)氏

(宮城県大崎市 産業経済部 産業振興局長)

 

 1966年生まれ、1989年旧田尻町役場に奉職し、2006年の合併により大崎市職員となる。旧町時代は、総務、財政、企画など管理部門で職務であったが、合併後は、産業経済部で主に、地場企業や商店街の振興、企業誘致、新産業創出、創業支援、雇用対策などに従事している。昨年まで2年間は、議会事務局を経験し、行政だけではない市民感覚も学ばせていただいた。2021年4月から現職。

趣味:旅行(温泉)、スキー、市町村職員向けの研修講師。

川端 啓介(かわばたけいすけ)氏

(兵庫県豊岡市 コウノトリ共生部長)

 

 1964年兵庫県生。岡山大学工学部卒。1988年 豊岡市役所入所。建設課を皮切りに農林水産課、都市整備課、地籍調査課等で技術職としてハード事業を中心に従事。2018年から三たび、農林水産課配属となり、2020年から現職。


浅野 正富(あさのまさとみ) 氏 

(栃木県 小山市長)

 

 早稲田大学法学部卒業後、1992年4月小山市に浅野正富法律事務所開設。同じくして、栃木県弁護士会副会長(~平成5年3月)、2006年4月宇都宮大学農学部非常勤講師、2009年4月ラムサール・ネットワーク日本事務局長(~2019年6月)、2013年6月ラムサール湿地ネットわたらせ事務局長を歴任。2020年7月~小山市長。


<進行役>

呉地正行氏(くれちまさゆき)
(日本雁を保護する会 会長、NPO法人ラムサール・ネットワーク日本 理事)

 

 1949年神奈川県生まれ。東北大学理学部卒業。ガン類とその生息地の保護保全、農業との共生に取り組む。市民参画型の自然再生運動や地域興しを実践し、生物多様性を活かし、循環型農業をめざす「ふゆみずだんぼ」を広く紹介し、ICEBAには立ち上げから関わる。大潟村応援大使、ラムサール・ネットワーク日本・理事なども努める。


第4部 新たな潮流


 “新たな潮流” 

 それは、持続可能な社会をつくること=これから小山市がめざす「田園環境都市」のまちづくりのこと。その一環として試みている、小山の風土に関する調査と人々の暮らしを深堀りする地域の声の聞き取りについて報告します。

 そして、労働者協同組合法制定の意義を踏まえた社会連帯に関する提言により、「田園環境都市」の可能性・方向性を示します。

<報告>「風土調査から始める持続可能なまちづくり」

廣瀬 俊介(ひろせしゅんすけ) 氏

(有限責任事業組合 風景社)

 

 環境デザイナー。専門地域調査士(日本地理学会)。栃木県益子町在住。地域の自然に人間が暮らしや生業を通してはたらきかけた結果である「風土」の成り立ちを調査し、その部分としてふさわしく環境を保全、修復、創造することを目標として活動しています。著書『風景資本論』(朗文堂、2011年)など。

簑田 理香(みのだりか) 氏

(有限責任事業組合 風景社)

 

 益子町在住。2016年から4年間、宇都宮大学地域創生推進機構/特任准教授。行政と民間をつなぐ立ち位置で、聞き取り調査やワークショップを基礎にした企画立案からブランディングや広報までを一貫して行う。地域活動では、コミュニティの創出・学び合う場づくり、遊休農地でシェアする農業、在来作物の調査などを仲間たちと展開している。


<提言>「社会連帯による行政との協同」

永戸祐三(ながとゆうぞう)氏
一般社団法人 日本社会連帯機構 代表理事

 

 中央大学法学部卒。在学中には全日本学生自治会総連合・中央執行委員長として学生運動のリーダーとして活躍。卒業後、建設一般全日自労・本部勤務、中央執行委員となる。

その後、中高年雇用福祉事業団全国協議会・事務局長、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会・理事長、労協センター事業団・理事長など、ワーカーズコープのトップリーダーを歴任。

現在は日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会・名誉理事、一般社団法人日本社会連帯機構・代表理事をつとめる。